◆浅茅露重 名にしおふ浅茅か露は浅からて
なひくはかりに見ゆる暮かな
長朝
◆蘭香薫枕 暮るゝ野の枕にかほるふちはかま
ことしも秋やきてかへるらん
忠廣
◆荻聲驚夢 轉寝の枕の夢はおきの葉の
聲よりさめて秋はきにけり
綱秀
◆夜鹿 夜聴鹿鳴頻断魂 翠微深處数聲喧
呦々呼友鏖孤枕 懶似巴山暮雨猿
玄劉
◆雲間雁 あけほのゝ空より聲の先おちて
雲まにみゆる雁の被一つら
忠廣
◆槿花 忽見槿榮秋思加 朝開暮落小籬笆
凄々風露半窓外 纔保紅顔一日花
秀定
◆翫月 秋天雲盡太堪憐 唫倚欄干月色鮮
三五夜中人不寝 家々醉賞一簾前
秀定
◆三日月 かけはまたほのかにみかの月なから
秋とはしるきひかりなりけり
実頼
◆駒迎 もち月の影澄のほる相坂の
關路の駒や今ひきぬらむ
富隆
◆九月十三夜 残る夜をおもへはいとゝ惜しまるゝ
名たかき月の明方のそら
其阿
◆搗衣聲幽 天涯行客豈消憂 半夜霜風碪韵幽
閨月明時多搗恨 漢宮遠報一簾秋
朝清
◆蟲聲悲 えらひつゝこよひや野邊の枕せむ
こゝらのむしの聲にひかれて
綱忠
◆菊花 菊逢秋日露香奇 白々紅々華満枝
好把西施舊脂粉 淡粧濃抹上東籬
兼続
◆雨夜紅葉 停車坐愛夕陽前 紅葉翩々雨後天
樹々半晴如濯錦 呉江秋色自西川
秀定
◆初時雨 きのふけふ雲のけしきそかはりける
しくれや冬をさそひきぬらむ
秀光
◆落葉 夜臥巖房夢易驚 満山落葉似秋鳴
辭枝片々隨風去 便向林間作雨聲
玄劉
◆枯野 春はもえ秋は花さく色かへて
かるゝ野中の霜の下草
朝秀
◆寒庭霜 枯のこるすゝきをしなみをく霜の
ふかきあさけの庭のさむけさ
能元
◆閨上霰 ねやの戸はあとも枕も風ふれて
あられよこきり夜や更けぬらん
利貞
◆夜千鳥 わか影を妻としたひて夜もすから
月の入江に千鳥啼なり
長朝