◆松雪 孤松吹雪倚岩檐 一夜枝頭白髪添
睡起朝来開箔見 灞橋詩思在蒼髯
兼続
◆氷上雪 ふりぬれとたまらさりしも汀より
氷れはみゆる雪の一村
氏秀
◆濱寒蘆 吹とをる濱風さえてほのほのと
霜のはなちる芦の一むら
綱忠
◆月前神楽 萬代はかねてしらるゝ時なれや
月に聲すむ里の夜神楽
元忠
◆暮鷹狩 山陰のくるゝ片野の鷹人は
かへさもさらに袖のしら雪
利貞
◆深山炭竈 住人のありともしらぬおく山に
のほるけむりや炭をやくらん
実頼
◆閑居爐火 閑居寂々飽看■ 爐火煎茶當晩飡
雲自為庵巖自壁 手焼榾柮忘残寒
元貞
◆仏名 唱へぬるほとけの御名はともし火の
かけふけつゝもこえそのこれる
信能
◆除夜 鳥鐘のこゑきくまてとともし火の
かけにたく香そ空にみちぬる
綱忠
◆末通詞恋 曳見ぬもさすかなりとは忍ふ身も
おもひあまりてをくる玉章
其阿
◆逢恋 風花雪月不關情 邂逅相逢慰此生
私語今宵別無事 共修河誓又山盟
兼続
◆後朝恋 掣電合歓終作寃 何圖今夜得君恩
断腸告別五更後 月白板橋霜一痕
元貞
◆未契恋 年少風流甲世間 僉言容兒貴妃顔
蒙塵獨道當時夏 比翼連枝可不攀
宗繁
◆来不留恋 夢に来てうつゝにかへる面かけの
のこるかひなき閨のうち哉
長朝
◆隠在所恋 さよふかくしのひきぬれはきゝなれぬ
こゑうちたてゝその人はなし
家能
◆絶後驚恋 なかなかに思ひたえにし夕暮を
又おとろかすふみのつてかな
隠其
◆片思 幾ゆふへわかまことをやねやの戸に
たちふかせとも人はつれなき
信能
◆老後恋 思あまりまことならさる夢をさへ
かたりいてぬる老のあわれさ
氏秀
◆待恋 欄干倚遍鬢皤然 有約無来漏刻還
虚跫悩人眠不得 風揺松竹一簾前
玄劉