◆軒松 積翠軒松啼子規 牀頭寂々夢醒時
庭前有个万年樹 夜々風聲侵老涯
朝清
◆庭遣水 苔のむす庭の岩まに流ゆく
水もみとりの色やそふらむ
忠廣
◆窓前竹 終日牕前奈寂寥 自栽脩竹楽逍遥
非含西嶺千龝雪 唯慣七賢出晋朝
元貞
◆圍碁 閑邊相対思無邪 終日圍棊夕照斜
一局聲宜竹樓上 夜来幾度落燈花
朝清
◆行客休橋 むかし見しなからの里はあれぬると
橋のほとりに休むたひ人
富隆
◆薄暮煙 真柴たくけふりも雲も夕くれの
かせのまにまになひくそらかな
能元
◆野亭風 まはらなる野への庵りはいとゝしく
かせのをとさへはけしかりけり
秀光
◆海路日暮 煙波月白映斜輝 獨數寒鴉南北磯
唫到芦花江水上 漁翁繋得釣舟帰
宗繁
◆山家 磐石垂蘿避世塵 山中舊宅獨容身
白雲深處行人少
峭壁攢峯蓋四隣
兼続
◆蕭寺 紛々世事未曾聞 寺在林間小路分
門外更無車馬客 晨鐘夕梵出深雲
玄劉
◆暁鐘 支枕幽斎夢不成 疎鐘報曉太多情
豊山霜白一聲裏 月落烏啼三五更
兼続
◆観無常 鳥邊野やよそのなかめの夕煙
あはれといひし人もいつかは
隠其
◆閑中燈 吹かせもしつかにくれておく山の
いほりしらるゝともし火のかけ
家能
◆往事如夢 来しかたを思ひ出れは行すゑも
ゆめのうちなる夢の世の中
富隆
◆餞別 折柳橋邊涙幾回 駐鞍終日擧離盃
帰舟早載春宵月 呈我江南一朶梅
宗繁
◆旅行 露宿風冷征袖霑 千莖白髪万莖添
出門遙望片雲外 又向誰家借半檐
玄劉
◆夜鶴 更る夜の松の嵐に夢さめて
聞も侘しき老鶴のこゑ
其阿
◆船過江 吹風に入江の小舟漕きえて
かねのをとのみ夕波の上
利貞
◆眺望 うき雲もたちそふ多古のうら浪に
を舟こきゆくはるのあけほの
長廣
◆端籬視 住よしの松のちとせをいくかへり
きみかありつるよにかそへまし
実頼