函館紀行〜雪が積もる頃に  (2)


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 一通り覗いた後、作品の撮影も兼ねて、もう一周してみる。入場料が1500円と、映画館並みに高額だと思ったが、それなりの価値はあると思う。しかし、同時に維持費もかなり掛かる建物だと思うし、入場料の高額さ、「ギャラリー」という敷居の高さ、がファン以外の観光客には足が運びにくかったのでは、と考えてしまう。とはいえ、GLAYファンなら一度は来てみたい聖地だろう。


 名残惜しいが、閉館の時間が近くなり、ギャラリーを出る。入館時に預かってもらった荷物を引き取る。係員の人は、終始、にこやかな対応をしてくれたのが嬉しかった。このホールは、大阪・堺のヒューマンEXCELという会社の経営になる。この会社の社長と北島三郎が親友で、「北島三郎記念館」を作り、同じ函館出身というわけで、GLAYにも話が行ったことを教えてくれた。
 深々と頭を下げる、係員さんにお礼を言いながら、外へ出る。冷たい空気。雨脚は強くなり、加えて風も出てきた。そんな中でも、ようやく「Art style of GLAY」に行けた事、そして係員さん達の暖かい対応に、胸が熱くなった。

 実はこのホールには、もう一つ、思い入れがある。2003年の函館旅行の折、函館山を下って、ホテルに帰る途中の私は道に迷ってしまった。日はすっかり暮れ、人気のない道を不安な気持ちで、歩いていた時に、「ちょうど出かけるから、ホテルまで送っていってあげるよ」と、車でホテルの前まで送ってくれたのが、当時建設中のウィニングホールのの男性だった。
 車中、私が大阪から来たと話すと、「僕も堺から出張で来たんだよ」と聞いて驚いた。「北島三郎記念館」の名を挙げ、「よかったら見に来てね」と、車から降ろしてくれた。
 結局、その時には、予定が合わずに行けなかったのが心残りだった。この旅で、名前も聞かなかったその男性へ、ようやく恩返しを出来た気がした。

 雨脚・風共に強くなったが、私にはもう一つだけ、見たい場所があった。駅前のホテルでチェックインを済ませ、そこに向かった。
 駅前の風景も4年の間に、様変わりしていた。もっとも大きな変化は、街の中心の函館駅だった。4年前は洋館風だった駅舎も、ガラス張りの、近代的な美術館風の建物になっている。合わせて、駅を通り抜け、路面電車の走るメインストリートに向かう。
 アーケードになっているメインストリートを、中央くらいで左折する。実は、雨で司会が悪くなっている上、通りの雰囲気も変わっていて、一度は通り過ぎてしまった。注意しながらもと来た道を歩いていくと、その建物を見つける。

 GLAYが高校時代に出演したライブハウス・「あうん堂」。

 今も多目的ホールとして、イベント開催時には開店しているが、その日は閉店していた。2003年に行った時には、Barとして夜も営業していた。気さくなオーナーと談笑したり、NHKの特番で有名になった、高校時代に彼らが書いた「GLAY」の落書きを見せてもらったのも、楽しい思い出だ。
 元々は、閉店したものを、「GLAYやYUKIが育ったライブハウスを無くしてはいけない」と、今のオーナーが営業を再開させたらしい。無くなるものもあれば、残っていくものもある。「Art style of GLAY」も何らかの形で復活してほしい。


 私の函館の観光は、そこで終わる。ホテルに帰り、ようやく落ち着いた頃、雨は雪になった。ホテルの窓から、積もっていく雪を見ながら、持ってきたMDで「Winter,again」と「ホワイトロード」を聴いた。函館を訪れた、多くのGLAYファンなら、誰もがこの街で「Winter,again」を聴くことに、感慨深さを覚えると思う。そして、私も思った。この景色こそ、GLAYの4人がこの曲に託したイメージである、と。

 翌日、早朝の電車で帰途に着いた。折りしも、北海道・東北地方には寒波が訪れ、それに直撃した私は、青森で足止めを食らう。初日に泊まった大館までは辿り着き、そこからJRのタクシーで、最終的に山形の新庄まで辿り着き、駅近くのファミレスで夜明かしすることになる。翌日も、山形から米沢までの線路が倒木、JRの出してくれたタクシーで、再び米沢を訪れ、その夜に東京に着き、夜行バスで大阪に帰りつくことが出来た。

 私の雪に対するイメージ。「陽」の部分が、函館や米沢での旅行を象徴していたのに対し、「陰」の部分、青森以降の「遭難」を通して、雪の厳しさを知った。

 函館で会った人たちにも、米沢で会った人たちにも、「次は春においで」と言われた。実際、次は春か夏、雪のない季節に行こうと思っている。それでも、また雪の季節に、函館や米沢に行ってみたいと思う。そこで、知った温もりこそ、北国の本当の姿だからと思うからだ。

                 <完>

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