《米沢編》 旅日記其の三

 

■笹野観音(米沢市笹野本町)■

市街地から、市街地と白布温泉を結ぶ道路を南下していくと、右手に大きな「お鷹ポッポ」が見えてくる。そこを右折すると、一刀彫で有名な笹野の里。道の両脇に「笹野一刀彫」の看板を掲げた店が点在する。

笹野観音は大同元年(806)、弘法大師の高弟徳一上人の開基と伝えられる寺である。伊達氏、上杉氏に篤く信仰されたと言われている。
本堂の彫刻が見事で、写真で紹介できないのが残念。

この寺は、「あじさい寺」の異名をもち、杉木立の中にあじさいが所狭しと植えられている。時期が遅かったので、終わりかけの花が咲いていたが、花の時期はさぞや見事だろうと思われた。

境内を出て右手にある一刀彫のお店『鷹山』で、お鷹ポッポを購入。笹野一刀彫は、笹野地区に古くから伝わる削りかけの木彫りで、上杉鷹山によって奨励され、盛んになったという。羽根が一枚一枚、薄く彫られており、その精巧さに、思わずため息が漏れてしまう。お鷹ポッポは「祿高を増す」ということで、出世を呼ぶ縁起物だという。木のぬくもりが感じられて、なんとも懐かしい感じのする玩具である。
『鷹山』では、一刀彫の実演や、希望すれば、絵つけの体験もできるそうである。が、そのどちらも体験することなく、笹野の里を後にした。

 

■西明寺(米沢市遠山町)■

もともと越後にあったが、慶長年中に米沢に移された。北条時頼(鎌倉幕府5代執権)の「鉢の木」伝説ゆかりの寺。
かなり急勾配の階段を登っていかなければならず、登った先のお堂の傍らに「虎尾樅(とらのおもみ)」とよばれる樅の木がある。これは、上杉綱勝が夫人の病気平癒を願い、手植えしたものという。

 

■旧米沢高等工業学校本館(米沢市城南)■

現在、山形大学の敷地内に建つ旧米沢高等工業学校の本館(山形大学工学部の前身)は、白い壁にブルーの屋根が美しいルネッサンス様式の建物である。

ここは道路脇に車を止め、外から眺めただけ。林泉寺の近く。

 

■さしこ工房『創匠庵』(米沢市門東)■

遠藤きよ子さんが主催する、刺し子の工房。自宅の土蔵を改造して造られたという工房には、コースターのような小さな物からタペストリーや着物といった大物にいたるまで、さまざまな刺し子の作品が展示されている。中でも、着物に施された刺し子は、筆で描いたような精巧さで、その見事さに眼を奪われた。

その昔、米沢には花ぞうきんという刺し子の"ぞうきん"がありました。こすられ、水で絞られ、ぼろぼろになる運命のぞうきんに、蜂の巣(亀甲)のような形の枠をとり、さまざまな文様を刺しこんでいったものです。(パンフレットより引用)

景勝が米沢に移封となったとき、それまで召し抱えていた家臣を解雇することなく、米沢に移った。入封当初、風雨をしのげる程度の仮の宿で、家臣たちは何年か耐え忍ばねばならず、下級藩士たちは半農半士の生活を余儀なくされた。その妻たちによって始められたのが刺し子だという。
花ぞうきんは、大変美しい文様で、実際に「雑巾」として使われることはなく(確かに、雑巾にしてしまってはあまりにももったいない!)、家の玄関などに置いて、その家の主婦が倹約家で、働き者であることを証するための物だったという。今でも米沢の人は、倹約家が多い、ということを、遠藤さんがおっしゃっていた。

展示されている作品もさることながら、主催の遠藤さんはとても明るく気さくな方で、遠藤さんの語る米沢弁が、とても心地好く心に響いた。

 

■酒造資料館「東光の酒蔵」(米沢市大町)■

『東光』の銘柄で知られる小嶋総本店は、上杉藩御用酒屋であり、現在まで390余年の歴史を誇っているという。
ここでは、酒造りの道具などが展示されており、昔ながらの造り酒屋の様子や酒造りの過程が見学できる。ひんやりとした酒蔵に染み込んだ麹の匂いが歴史の重みを感じさせる。

 

   ■白布温泉(米沢市白布温泉)■

市内から車で30〜40分の山あいにある神さびた感のある温泉地である。ここに兼続が鉄砲の秘密工場(?)を置いたことは、前頁で述べた。

<白布三十三観音>

温泉街の裏手の山の中に、苔むした石仏たちがひっそりとたたずむ。西国三十三観音を一堂に祭祀した霊場である。
前夜に降った雨のせいで、道がぬかるんでいたが、露を置いた草々の緑が鮮やかであった。

<西屋旅館>

100年以上前の創業となる白布の老舗旅館。かつては東屋さん、中屋さん、西屋さんと歴史のある旅館が三軒並んで営業していたそうだが、火災にて東屋さん、中屋さんは焼失。かろうじて西屋さんだけが被害を免れたという。(今秋より、東屋さんが新装オープンするそうである。)

今では見ることも少なくなった茅葺きの屋根が、まわりの山々に溶け込んで、しっとりとした風景を造り出している。旅館の中は、廊下に藤ござが敷きつめられており、素足に心地いい。
またここのお風呂がすごい。絶えず温泉が滝となって流れ出ており、その音といい、様子といい、「豪快」の一言に尽きる。

しばし時の流れを忘れさせてくれる、そんな安らいだ空間が、この宿にはある。

白布温泉を知りたい方はコチラ→白布温泉観光協会

 

■小野川温泉(米沢市小野川温泉)■

市街地から車で15〜20分の地にある小野川温泉。小野小町が発見したという伝説がある。
また、ここは、蛍の里としても有名で、6月中旬〜7月下旬の時期には蛍の幻想的な舞いを見ることができるという。残念ながら、蛍の時期はちょっと過ぎていて、音に聞く蛍の乱舞(?)を見ることは叶わなかったが、草むらに1匹、2匹、かすかな光を灯しているのを見ることができた。

蛍と言えば、かつては人の魂と見立てられていた。闇に舞うかすかな光が、はかない人の魂のように、いにしえの人には映ったのだろう。『伊勢物語』の

とぶほたる雲の上までいぬべくは秋風ふくと雁につげこせ

という歌や、和泉式部の

物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂かとぞみる

という歌などが思い出される。小町の歌に、蛍を読んだものがあっただろうか、と思い、帰るなり、『古今集』や『新古今集』などをあたってみたが、見当たらなかった。私家集あたりを探せば、載っているのかもしれないが…。

<うめや旅館>

小野川温泉でお世話になった旅館。
ごく普通の旅館だが、お値段がリーズナブルで、お料理もおいしかった。(不肖よーぜん、お肉が苦手で米沢に来て、米沢牛を食さずに帰りました。同行者は、堪能したようですが)

うめや旅館については、コチラ

 

写真撮影:又左衛門

2001.8月


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